兵庫県立美術館で「李禹煥(リ・ウファン)展」が始まりました。
2022年8月に国立新美術館で開催された展覧会が巡回して、兵庫県にきました。
西日本で初めてとなる大回顧展の場所が、安藤忠雄氏の建築である兵庫県立美術館。
わたしは芸術の専門家ではありませんが、日本はもちろん海外でも多くの美術館を巡ってきました。
専門家ではないからこそ、見える視点もあります。初心者の方にもわかりやすい言葉で、李禹煥展のすばらしさをご紹介します。初心者でも気軽に楽しんで頂けるとうれしいです。
李禹煥(リ・ウファン)展
李禹煥(リ・ウファン)展
2022.12.13~2023.2.12
兵庫県立美術館
「もの派」を代表する美術家、李禹煥(リ・ウファン、1936- )の1960年代末の初期作品から最新作までを集めた大規模な回顧展です。
今回のわたし視点の見どころをご紹介します。
①もの派
李禹煥氏は「もの派」と呼ばれる美術家です。
もの派とは、「もの」をできるだけそのままの状態で作品の中に存在させること。
すべては相互関係のもとにあるという世界観で作られています。
〈関係項〉のシリーズが有名です。
たとえば、こちらの作品↓石・鉄・ガラスのみ。
よく見るとガラスにヒビが入っています。
広い広い空間に、これだけ。壁のピンクが鮮やかで、ふわっとまわりに色彩が広がる。
この空間を楽しむのです。
この作品はガラスがかなり割れています。↓
上から石をドーンと落としたら、こんなに分厚いガラスに綺麗な曲線が描かれます。
こちらは広い広い空間に、石だけ↓。
光と影を感じます。どんな影?どんな光?
よくみると、影が線で書いてあって、交わっています。
他にも、壁に鉄、そして石。
写真ではわかりにくいのですが、場所の空間がかなり広いんです。
広い広い空間に、ポツンと置いてあります。
美術館なので天井もとても高く、その空間にいるだけで不思議な空気感。
鉄と石が会話しているような、寄り添っているような、あなたはどのように感じるか。
それを楽しむのがこの場所です。
②安藤忠雄氏との繋がり
直島にある「李禹煥美術館」は、建築家安藤忠雄氏の建築と現代美術作家の李禹煥氏の作品が融合した美術館です。
今回、安藤氏が設計した兵庫県立美術館の屋外に李禹煥氏の新作が。おふたりの融合した作品がここで見られるなんて感動です。
この最新作は、丸い大きなステンレスに向かって上から1本の糸が垂れ下がっています。
兵庫県立美術館の名物でもある螺旋階段に、最新作があります。
<関係項-無限の糸>2022
③絵画<点より><線より>
個人的にこのシリーズがわたしは大好きです。
筆にたっぷりの絵具を含ませて、点を書いていく。色彩の濃さが次第に淡くなっていく。その時間の経過を表しています。
点や線は一回限り、失敗は許されない。
<線より>16時間ぶっ続けで書かれたとのこと。
④音声ガイドが中谷美紀さん
音声ガイドとは、展覧会を見ながら音声でガイドしてくれるサービスのこと。
通常は有料なのですが、今回は「無料」です。
イヤホンを持参すると、自分のスマホで聞くことができます。
もしイヤホンがない場合は、音声ガイド機の無料貸し出しもあります。
わたしはイヤホンを持参したのですが、やっぱり自分のもので聴けるって安心。
無料Wi-Fiの登録や、音声ガイドのやり方は入り口で専属のスタッフが教えてくれます。
全然わからなくても、とっても親切に教えて下さいました。
わたしは仕事柄もあり(元ホテルウーマン)、「声」でどんな人なのか、敏感に感じることができます。そしてかなりの「声フェチ」です。
今回、この展覧会の一番の楽しみが中谷美紀さんの音声ガイド。
作品ひとつひとつのガイドは1~2分と短いので、聞きやすいのも特徴です。
李禹煥氏のシンプルで上品な作品と、中谷美紀さんの落ち着いた深みのある知性溢れる声が最高にマッチしていて、作品の中を歩きすすめながら、どれほど感動したことか。
同じ場所で、何度も何度も音声をリピートしたり。
「たっぷり」というところが特に好きで、今でもその声が頭の中に残っています。
⑤わたしの「No.1」
毎回展覧会に行くと、その中で一番気に入った作品を勝手に選んでいます。
初心者の方にも、この方法はおすすめです。
作品をはじめから最後まで見て「これが一番好き!」というのを決めようと思いながら見ると、視点が変わります。
自分から積極的に「作品を感じにいく」という体験ができます。
今回は、この作品を選びました↓
広いキャンパスに書かれたのは、これだけ。
<対話>2020
絵が会話しているようにも見えますね。
想像を超える大きな作品ですが、この余白、空白に意味があります。
「一瞬の出会い 余白の響き 無限の広がり」
by 李禹煥
美術館という広いシンプルな空間で、余白を感じながら、身体の隅々まで李禹煥氏の作品からにじみ出る色や響きを味わってきてください。
何もわからなくてもいい。
ただ、そこに足を運んで、そこにいる。その体験だけで、行った価値があります。
作品の感想は人それぞれ。正解はないのです。
余白をどう感じるのかも、あなた次第でいいのです。
わたしは、広い空間にわたしと石と鉄。それだけになったとき(これだ)って思いました。
この経験がしたくて、ここにきたのだと。
展覧会概要
所在地:神戸市中央区脇浜海岸通1-1-1(HAT神戸内)
アクセス:阪神電車岩屋駅から南へ徒歩約8分、JR:神戸線灘駅南口から南へ徒歩約10分
開館時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
休館日:月曜日(祝休日の場合は翌日)年末年始(12月31日、1月1日、1月2日)
※ただし1月9日は開館、1月10日は休館
料金:一般1,600円、70歳以上800円、大学生1200円、高校生以下は無料。
https://www.artm.pref.hyogo.jp/exhibition/t_2212/
李禹煥展 展示室内での撮影は平日限定
平日は会場での写真撮影が可能です。(※1月3日を除く)
他のお客様や作品の安全へご配慮いただき、撮影をお楽しみください。
※土・日・祝は撮影不可。